山林が果たす治水の役割 台風や大雨による氾濫・洪水を緩和する

山林の治水

日本国土の約3分の2を占める山林には様々な役割があり、その中の一つに、台風や大雨による洪水災害を緩和する「治水」があります。

日本の河川は、急峻な山岳地帯にある源流から河口までの距離が短く、高低差が大きいことが特徴です。そのため、台風や大雨の影響を受けやすく、流入量が一気に増加すると河川の氾濫や堤防決壊、洪水による被害が発生しやすくなります。

特に7月から10月にかけては日本に接近する台風が多くなるので注意が必要です。

古くは「昭和の三大台風」と呼ばれる室戸台風、枕崎台風、伊勢湾台風によって、河川の氾濫による洪水や住居の浸水、土砂崩れなどの被害が発生し、多数の人命が奪われました。

最近では2018年9月に上陸した台風21号が、京都や大阪を含む西日本各地に大きな被害をもたらしました。山林内でも強風によって多くの倒木被害が発生しています。

また、国土交通省は2019年10月に上陸した台風19号「ハギビス」による大雨の影響で、長野県の千曲川や東京の多摩川をはじめ、全国47の河川、66か所で堤防が決壊したと発表しています。

日本ではダムの整備や堤防の構築が進み、昔に比べると河川の氾濫や洪水による被害は減っていますが、現在でも台風や大雨による影響を完全に防ぐことはできません。

山林の役割 氾濫や洪水を防ぐ「治水」

日本の山林

日本国土の約3分の2を占める山林には、水資源を生み出す「水源涵養機能」や、雨水の流出量を平均化して洪水を防止する「洪水緩和機能」など、様々な役割があります。

多くの樹木が根を張る山林の土壌内は天然のスポンジに例えられ、山に降る雨は土壌内に染み込んで蓄えられます。これが「水源涵養機能」です。

また、土壌内に貯まった雨水は地表だけでなく、地下水など様々な経路でゆっくりと川や平地に流れます。この「洪水緩和機能」よって、大雨でも河川の流量を緩和することができます。

世界自然保護基金(WWF)によると、今から8千年から1万年前の森林面積は、現在の約2倍あったと推定されています。この当時は人類の手が入らず、自然のままの山林が広がっていました。

しかし、人類が農耕や牧畜によって山林を伐り拓き、文明の発展とともに木材が燃料や建築物に使われるようになると、森林破壊が深刻化していきました。

古代のギリシャやローマ、黄河文明でも、国家の発展と引き換えに森林を荒廃させ、その結果として耕作地の減少や洪水の発生により衰退していったという歴史があります。

近年ではアマゾン川周辺や東南アジア諸国の開発が進むにつれ、熱帯林を中心に森林の減少が進み、年間で520万ヘクタール(2000年から2010年までの平均)もの山林が失われています。

国土面積に占める森林の割合は「森林率」と呼ばれ、日本の「森林率」はフィンランドに次ぐ世界第2位(OECD加盟国中)を誇り、日本は先進国のなかで非常に森林率の高い国です。

この豊かな森林が水資源を生み出すとともに、河川の氾濫や洪水を緩和する「治水」の役割も果たしています。